[棄却]全国学力テスト – 公文書公開決定取消請求 – 平成20年 [地裁] (行ウ) 第204号

全国学力テスト
公文書公開決定取消請求

平成20年 [地裁] (行ウ) 第204号

提訴 2008年10月22日
棄却 2010年 3月11日 判決文(PDFファイル 1.3MB)

この色は原告側からの訴状、準備書面など
この色は被告側からの答弁書、準備書面など
この色は裁判所からの判決など

提訴 2008年 10月 22日

訴  状

〒574-0024
大阪府大東市泉町二丁目7番18号 原告    光城 敏雄
(送達場所)電  話 072(875)4829
電  話 090(9990)6527
ファクス 020(4623)1016

〒574-0076
大阪府大東市曙町4番6号   被告 大東市  代表者 大東市教育委員会

事件名    公文書公開決定取消請求事件
請求の趣旨

1、被告は原告に対して、平成20年 10月 14日付でなした別紙公文書についての不十分なる「公開決定」を取り消し、市民の知る権利を保障した、また説明責任のある充実した内容にすること。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

請求の原因

1、当事者
原告は肩書地に居住する大東市民である。
被告は大東市の大東市教育委員会であり、同市の大東市情報公開条例(以下本件条例という)の実施機関である。

2、文書公開請求
原告は、平成20年 10月 3日に、「平成20年4月22日に文部科学省が行った全国学力、学習状況調査の結果 」の情報公開請求をした。

3、本件処分
被告は同年同月 14日に「公開決定通知書」を電子メールにて送付した。

4、公開決定取消請求の理由
「公開決定」とされた情報は「平成20年度全国学力・学習状況調査結果 ・一次分析「大東市の概要」」(甲3号証)であり、同市の教育委員会が市民に公表しようとしてまとめたものである。
しかし少なくともそれ以前に文部科学省から知らされた小学校の児童と中学校の生徒への個人の結果 があり、また、それぞれの学校別の結果があり、その他の情報が存在するはずである。
仮に児童と生徒の各個人への結果が個人情報であるとの決定がなされれば、個人情報保護の観点から「部分公開決定」とならざるを得ない。
よって、この不十分なる「公開決定」は大東市教育委員会の事実誤認であり、説明責任を欠いた怠慢である。

5、よって、本件処分は違法であるから、その取消を求め本訴に及ぶ。

証拠書類

1、甲1号証   情報公開請求書
2、甲2号証   公開決定通知書
3、甲3号証   平成20年度全国学力・学習状況調査結果・一次分析
「大東市の概要」

添付書類

1、甲号証写し                 各2通

平成20年 10月 22日
原告  光城敏雄
大阪地方裁判所御中

 

中間判決 2009年 1月 29日

平成21年1月29日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成20年、(行ウ)第204号 公文書公開決定取消請求事件
口頭弁論終結自 平成20年12月2日

中   間   判   決

大阪府大東市泉町二丁目7番18号
原       告      光城 敏雄

大阪府大東市曙町4番6号
被       告     大東市
代表者兼処分行政庁     大東市教育委員会
代 表 者 委 員長    田中 美穂
被告訴訟代理人弁護士    俵 正市
同             寺内 則雄
同             植村 礼大

主         文

原告が平成20年10月3日にした情報公開請求において,同年4月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果 のうち「個別享校ごとデータ」が請求対象とされておらず,「個別学校ごとデータ」を非公開とした処分は存在しない旨の被告の主張は理由がない。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

処分行政庁が平成20年10月14日付けで原告に対してした個別学校ごとデータを非公開とした処分を取り消す。

第2 事案の概要

本件は,大阪府大東市の住民である原告が,大東市情報公開条例に基づき,処分行政庁に対し,「平成20年4月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果 」の公開請求を行ったところ,「個別学校ごとデータ」の公開がされなかったとして,その取消しを求めている事案である。

1 大東市情報公開条例の定め(弁論の全趣旨)

(1)市の区域内に住所を有する者は,実施機関に対し,情報の公開を請求することができる(5条柱書,1号)。
ここで「情報」とは,実施機関が職務上作成又は取得した文書,図画,写 真,フイルム,磁気テープその他これに類するものに入力された記録で実施機関が管理しているものをいい,「情報の公開」とは,実施機関が,本条例により,情報を閲覧若しくは視聴に供し,又は規則に定める方法によりその写 しを交付することをいう。また,上記実施機関には,教育委員会が含まれる。(以上につき,2条)

(2)情報の公開を請求しようとする者は,((1))氏名及び住所,((2))公開の請求をしようとする情報を特定するために必要な事項,((3))その他実施機関が定める事項を記載した請求書を実施機関に提出しなければならない(9条1項)。

(3)実施機関は,上記(2)の請求書に形式上の不備があると認めるときは,請求者に対し,相当の期間を定めて補正を求めることができる。この場合において,実施機関は,請求者に対し,補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない。(以上につき,9条2項)

(4)実施機関は,上記(2)の規定による請求があったときは,当該請求を受けた日から10日以内に公開を行うかどうかの決定を行わなければならない。ただし,正当な理由があるときは,その期限を10日間を限度として延長することができる。(以上につき,10条1項・2項)

(5)上記(4)の期間内に実施機関が公開を行うかどうかの決定を行わないときは,請求者は,公開をしないこととする決定があったものとみなすことができる(10条5項)。

2 前提事実(弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

(1)原告は大東市の住民である。

(2)原告は,平成20年10月3日,処分行政庁に対し,「請求する情報の件名または内容」欄に「平成20年4月22日に文部科学省が行なった全国学力・学習状況調査の結果 」と記載し,「情報の公開の実施方法の区分」については、「電子メールでの送付」欄に丸印を付し,電子メールアドレスを付記した書面 を提出して,情報公開請求を行った(以下「本件請求」という。)。

(3)処分行政庁は,平成20年10月14日付けで,公開決定通知書を原告の上記アドレスに電子メールで送付した。同通 知書には,本件請求のあった情報の公開については,次のとおり公開することに決定したとして,以下のように記載されていた。(上記公開決定通 知書による決定を,以下「本件公開決定」という。)
公開の方法  写しの交付(電子メールでの送付)
情報の件名  平成20年4月22日に文部科学省が行った全国学力,学
習状況調査の結果
平成20年度全国学力・学習状況調査結果
・一次分析「大東市の概要」
分類・区分別集計結果
・小学校(国語A・B,算数A・B)
・中学校(国語A・B,数学A・B)

(4)本件公開決定により公開するものとされたのは,処分行政庁が作成した「平成20年度全国学力・学習状況調査結果  大東市の概要」と題する資料並びに「分類・区分別集計結果(小学校)」及び「分類・区分別 集計結果(中学校)」と題する資料(表)であり,そこには,文部科学省が行なった全国学力,学習状況調査の各科目の分野ごとの大東市内の学校全体の平均正答率と全国の平均正答率とを対比した表・グラフが記載されているほか,その結果 についての分析が記述されている。

3 争点

本件請求において,平成20年4月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果 のうちの「個別学校ごとデータ」が請求対象とされていたか(同「個別学校ごとデータ」は請求対象とされておらず,これを非公開とした処分は存在しない旨の被告の主張に理由があるか。)。

第3 争点に対する判断
1 弁論の全趣旨によれば,処分行政庁は,「平成20年4月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果 」を文書等の形で管理しており,その中には「個別学校ごとデータ」も含まれているものと認められる。
一方,前記前提事実(第2の2)(2)のとおり,本件請求をした書面において,「請求する情報の件名または内容」欄には「平成20年4月22日に文部科学省が行なった全国学力・学習状況調査の結果 」と記載されている。このことからすれば,原告は,請求の対象とする情報をそれ以外の情報と区別 できる程度に特定した上で,処分行政庁が管理する上記「平成20年4月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果 」を公開請求の対象としているものと認めることができる。そして,上記書面 の記載内容によれば,「個別学校ごとデータ」を公開請求の対象から除外する趣旨を読み取ることはできないから,「個別 学校ごとデータ」についても公開請求の対象としていたものとみるべきである。

2 この点について,被告は,((1))本件請求がされた後,処分行政庁の事務局学校教育部教育政策室から情報公開の担当部署である被告の総務部総務課に対して請求内容を確認したところ「不明」との回答を得た,((2))そこで,処分行政庁の学校教育部長から原告に対して電子メールで問い合わせを行った,((3))これに対して,原告からは,「市議会合同委員会協議会で説明された「以上のものをご希望」し,どこまで請求できるのかそちらで決定してみてください」との返信 メールがあっただけで,請求を具体的に特定する回答はなかった,((4))このため, 処分行政庁は,「個別学校ごとデータ」について請求行為がないものとして,記前提事実(3)のとおりの公開決定通 知書を送付した,((5))したがって,「個別学校ごとデータ」を非公開とした処分は存在しないと主張している。
しかしながら,本件請求が「個別学校ごとデータ」を含んだ「平成20年4 月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果」全体を公開請求の対象としたものとみるべきであることは,上記1で判断したとおりであって,その特定に欠けるところはないし,「個別 学校ごとデータ」 を請求から殊更除外したと解すべき根拠も見いだせない。
仮に,上記2のような被告主張の経過があったとしても,それは,処分行政庁が請求対象の範囲の限定,不必要な部分の削除(請求の撤回)をするよう原告に求めたものの,原告から処分行政庁の意図に沿った応答が得られなかったことを意味するにとどまり,本件請求の対象の特定が不十分となったり,あるいは,請求対象の範囲から「個別 学校ごとデータ」は除外されたり,逆に,請求対象が本件公開決定の「情報の件名」欄記載の範囲に限定されたなどと解する余地はないものである。
なるほど,処分行政庁が請求対象を真に必要な範囲に限定するよう求めることは,事務処理上の要請として理解できないものではなく,被告が主張する上記((3))の原告の応答は必ずしも協力的なものではなかったことがみてとれるが,そうだからといって,本件請求に明示された請求対象を処分行政庁の独断で限定的にとらえることができないのはいうまでもないことである。
以上のとおり,本件請求において,平成20年4月22日に文部科学省が行った平成20年度全国学力・学習状況調査の結果 のうちの「個別学校ごとデータ」は請求対象とされていたものであり,これを非公開とする判断は本件公開決定その他で明示されていないものの,本件請求から10日又は20日が既に経過した現時点までに同「個別 学校ごとデータ」が公開されていないことは弁論の全趣旨から明らかである。この場合,原告は,大東市情報公開条例10条5項の規定(前記第2の1(5))により,非公開の決定があったものとみなすことができるから,同「個別 学校ごとデータ」を非公開とした処分が存在しないとする被告の主張には理由がない。
よって,主文のとおり,中間判決する。

大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官   吉   田   徹
裁判官   小   林   康   彦
裁判官   仲   井   葉   月

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA