[提訴]債権放棄議決濫用 (非常勤職員退職金) – 平成22年 [地裁] (行ウ) 第31号

債権放棄議決濫用(非常勤職員退職金)
債権放棄議決濫用損害賠償請求事件

平成22年(行ウ)第31号

提訴 2010年2月18日

訴状

原告ら訴訟代理人 弁護士  井  上  善  雄
同  豊  島  達  哉
同  西  浦  克  明

債権放棄議決濫用損害賠償請求事件

訴訟物の価格   1,600,000円
ちょう用印紙額     13,000円

当事者の表示

〒574-0024
大阪府大東市泉町二丁目7番18号
原告     光城 敏雄   以下 13名

大阪府大東市谷川一丁目1番1号
被告     大東市長  岡本 日出士

請求の趣旨

1 被告は、別紙被請求人目録記載の被請求人らに対し、金388万5275円及びこれに対する平成19年8月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

請求の原因
第1.当事者

1 原告らは、大阪府大東市の住民である。
2 被告は、大東市市長である。
3 別紙被請求人目録記載の者は、市長および議員で、大東市の岡本市長個人と職員らへの損害を放棄する決議を共謀実行し、市に損害を与えた者である。

第2.大東市非常勤退職金の支給と住民訴訟の経過

1. 大東市(現市長 岡本日出士)では、名目上は「非常勤職員退職慰労金」と称して非常勤職員に対し退職金を支給している。平成10年度から18年度まで9年間の支給金額は合計43,427,777円となる。なお、平成11年度以降は「大東市非常勤職員の報酬等に関する要綱」9条に基づく退職慰労金としている。
ちなみに、平成18年10月からの一年に限っても監査結果では、岡本市長の承認の下、木村総務部長と亀岡人事課長の決裁で平成19年4月2日に1名に対し238万1650円、牧野人事課長の決裁で平成19年8月1日に1名に対し31万2800円を支出していた。
2. このため住民は、平成19年10月23日付けで違法な公金の支出につき、大東市監査委員に対し、地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ、同年12月11日付(大東監第121号)文書にて、大東市監査委員は、原告に対し、上記監査請求を棄却する旨の通 知を行った。
しかし、監査結果は、法・条例の本旨もわきまえず、「現状続けてきたことで不当ではないとか、損害がない」というもので、およそ監査委員の職責を果 たしていない。その一方で、「非常勤職員の報酬に関して法令の趣旨に沿ったものとして市民の理解を得られるよう、早急にその制度の見直しを求める」とも要望しており、実質矛盾した判断をしたので、同年12月18日に同旨の住民訴訟を提訴した。
これに対し、大阪地裁は、平成20年8月7日にこれら退職慰労金の支給の違法性を認め、238万1650円と31万2800円は岡本日出士に責任があるとして、市長に同金と平成19年4月3日から年5分の割合の金員の請求をするよう命じた。
また、木村幸雄、亀岡治義に対して、それぞれ119万0825円及びこれに対する平成19年4月3日から年5分の割合の金員の請求をするよう命じ、牧野功に対しては31万2800円及びこれに対する平成19年8月2日から年5分の割合の金員の請求をするよう命じた。
この判決に対し、被告市長は平成20年8月19日控訴し、11月19日第1回弁論がもたれたが、大阪高裁(安原清蔵裁判長)は一度は岡本らに一定の金員を賠償させる和解案で双方に打診し、和解期日が11月28日、12月19日に設けられたが、後記の経過で市長は和解を拒絶し、平成21年2月24日に結審した。結局同高裁は平成21年3月26日に被控訴人の訴えを却下した。

第3.司法判断に対する市長と議会の動きと議決の違法・無効性

1. 実は、この控訴審の和解期日経過において、平成20年12月22日、岡本日出士と議員との通 謀の下に大東市の岡本日出士に対する238万1650円と31万2800円と遅延損害金全額について、木村幸雄、亀岡治義に対してそれぞれ119万円0825円と遅延損害金全額について、牧野功に対する31万2800円と遅延損害金全額について司法判断にかかわらず損害賠償請求をすることを放棄する旨の議案が、寺坂修一、岩渕弘、川口志郎、古崎勉4名により提案され、大東市議会(平成20年12月22日当時議長 内海久子)は、まともな審議もなく後記の×印の議員賛同者により即日議決した。
×1番 大 谷 真 司 議員   ×10番 三ツ川   武 議員
×2番 大 束 真 司 議員   ×11番 澤 田 貞 良 議員
×3番 水 落 康一郎 議員   ×12番 中 河   昭 議員
×4番 川 口 志 郎 議員   ×13番 古 崎   勉 議員
5番 光 城 敏 雄 議員   ×14番 豊 芦 勝 子 議員
×6番 飛 田   茂 議員   ×15番 松 下   孝 議員
×7番 寺 坂 修 一 議員   ×16番 中 谷   博 議員
8番 内 海 久 子 議員   ×17番 岩 渕   弘 議員
×9番 中 野 正 明 議員
具体的には、訴訟の原告でもある光城敏雄議員を違法にも強制的に除斥させ、残りの議員は全員起立賛成したとして採決されたとしているのである。
これらの多数決決議は、地方自治法112条による議員提案で根拠法条は明示していないし、手続き的にも内容的にも提訴中の住民訴訟一審判決を覆す正当な公益的条件もなくなされたもので無効である。ちなみに、同法96条1項10号は、議決をする内容項目を例記したもので、単独で議決できる要件や執行力あることを定めたものではない。
2. この債権の放棄は地方自治法上の住民訴訟制度を定める制度同法240条3項の制度を潜脱し、違法に市の債権を失効化し、議会議員らの善管注意義務に反し、公益に違反して、市の財産を喪失せしめようとするものである。これらの放棄決議により住民訴訟上の市民の権利を奪おうとするもので法律上違法である。そして、住民の措置請求権を不法に奪い、あるべき市長の債権行使義務を妨害し、また市長個人らの市への債権義務履行を拒絶し放任する理由を与え、大東市に損害を与える不法行為といえる。
議員提案者及び賛成議員は、大東市の職務執行、財産保全に善管注意義務、忠実義務がありながら、法令に基づく住民監査請求と住民訴訟制度を無視、無効化しようとし、岡本日出士に不法な利得を与えようとする背任行為を企図し、加担し実行したものである。
ちなみに、岡本市長らの歴代の本件同様の公金支出による損害賠償請求権は、原告の提訴していないものの市の債権そのものは存在しており、これらについて議題にもあげず、原告の提訴事案分だけについて放棄していることは、専ら住民訴訟を無にする目的だけであったことを裏付けている。
3. そもそも議員らは行政事務が適正に行われているかを監督し、むしろ法的根拠のない公金支出、本件で言えば条例上根拠のない退職慰労金給与を止めさせるべきなのにそれを怠っていた。
上記債権放棄決議は、これらの議員らが自ら怠っていた行為に反省なく、これらの自己の責任をも隠そうとするものであった。そして、一審判決を事後的に葬り去り、住民訴訟制度の存在意義を奪うため、公益に反して議会の多数派と岡本日出士らの通 謀下になされているものであって悪質極まりないものといえる。

第4.前訴高裁判決の誤りの債権行使の放棄の違法な執行状況

1. このような司法判断を事後に覆そうという意図での議決を理由に、大東市長は大阪高裁に弁論を行った。同高裁は平成21年3月26日に判決として、大阪高裁第12民事部(安原清蔵裁判長)は「地方自治法96条1項10号は,議会の議決事項として『法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別 の定めがある場合を除くほか,権利を放棄すること』と規定し,法令や条例の定めがある場合を除いて,広く-般 的に地方公共団体の権利の放棄については,執行機関である地方公共団体の長ではなく,議会の議決によるべきものとしているところ,退職慰労金の支給の違法を原因とする損害賠償の放棄については,法令又は条例になんら特別 の定めはないのであるから,仮に本件の退職慰労金の支給が違法であって,大東市が本件各損害賠償請求権を取得したとしても,本件各損害賠償請求権は本件議決により消滅したというしかない。」と判示した。
2. しかし、同様の茨木市の事案で、大阪高裁第6民事部は平成20年9月5日「本件一時金に係る損害賠償請求権は、地方自治法149条6号により茨木市の執行機関が管理すべき債権であって、その債務免除は、同法240条3項により、議会の同意を得た上で、執行機関の債務者に対する意思表示によってなされるべきものであり、議会の決議のみによって効力を生じるものということはできない」と、全く別 の条理ある判決をしている。
大東市の本件債権放棄の議決は、手続き的にも違法なだけでなく、大阪高裁第6民事部の判決のように、議会の放棄議決は執行機関の権限を超える。また、かかる議決は議会としての地方自治体の住民訴訟制度の意義と公益性を損なうものであり、地方自治法の2条14項や地方財政法の1条~4条の定めを具体的に検討することなくなされた大東市の利益に反するものである。
地方自治法96条の「議決事項」の定めを自ら執行機関としての条項でなく、発議と議決をしたとしてもそれは多数の事実上の意見以上の効力は持たないというべきである。それを岡本らと議員は執行力あるものとしている。
ちなみに、平成21年6月16日の第29地方制度調査会(中村邦夫会長)の総理大臣への答申でも、「かかる議決は住民訴訟制度の趣旨を損ねることになりかねない」として、かかる議決そのものにつき、「当該訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権の放棄を制限する措置を講ずるべきである」としている。
また、その後も第一審判決後の条例による神戸市に対する神戸市長個人の損害の請求を放棄することを違法とする判決がなされている。大阪高裁第13民事部の平成20年(行コ)第88号事件の平成21年11月27日言渡し判決は、神戸市の職員派遣をめぐる公金支出についての一審判決後の議会の請求放棄に関し、公益上の必要性や合理的理由を欠き、住民訴訟を無にするとして違法無効であると、より明確に判断している。
東京高裁でもかかる放棄は三権分立制度にさえ違反するとまでコメントして、違法無効とする判決(東京高裁第14民事部 平成21年(行コ)第27号 平成21年12月24日言渡し判決)もある。
ところが、大東市長岡本は、自らに対する債権放棄決議を理由として事後的に債権は喪失したという立場をとっており、債権回収を没却、喪失せしめる不法行為に加担実行したものといえる。
3. よって、請求人らは、上記岡本及び放棄議案を提案し賛成した前記×印の議員と岡本日出士らが大東市に対して少なくとも238万1650円と31万2800円、119万円0825円それぞれ及びこれに対する平成19年8月2日から年5分の割合の金員の請求をするよう命じ、大東市長が損害賠償を求めること、また、損害金を徴収することを怠る事実の違法の確認を求めて、地方自治法242条1項により、平成21年12月15日、住民監査請求をした。
ところが、監査委員は、平成22年1月20日、理由にもならない理屈をつけて棄却通 知した。

第5.結論

よって、別紙被請求人目録記載の者は、市に対して金388万5275円およびこれに対する平成19年8月2日より支払い済みまで年5分の割合による損害金を支払うべきであり、大東市長がこれを請求することを求めて本訴を提起する。

証 拠 方 法

甲第1号証     住民監査請求書
甲第2号証     住民監査請求について(通知)

添 付 書 類

1 訴訟委任状     1通
2 甲号証写し    各2通

(別紙)
被請求人目録

岡  本  日  出  士(大東市長)
大  谷     真  司(大東市議会議員)
大  束     真  司( 〃 )
水  落  康  一  郎( 〃 )
川  口     志  郎( 〃 )
飛  田        茂( 〃 )
寺  坂     修  一( 〃 )
中  野     正  明( 〃 )
三  ツ  川     武( 〃 )
澤  田     貞  良( 〃 )
中  河        昭( 〃 )
古  崎        勉( 〃 )
豊  芦     勝  子( 〃 )
松  下        孝( 〃 )
中  谷        博( 〃 )
岩  渕        弘( 〃 )

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