[棄却]大東市互助会 – 大東市互助会上告(被告側) – 平成21年 [最高裁] (行ツ) 第34号 (行ヒ) 第43号

大東市互助会
大東市互助会上告(被告側)

平成21年 [最高裁] (行ツ) 第34号、(行ヒ) 第43号

判決 2010年3月25日 棄却(原告勝訴) PDFファイル

平成21年(行ヒ)第43号
平成20年(行コ)第26号 損害賠償等請求事件
(原審・大阪地方裁判所平成17年(行ウ)第89号)

判    決

当事者の表示   別紙当事者日録記載のとおり
上記当事者間の大阪高等裁判所平成20年(行コ)第26号損害賠償等請求事件について,同裁判所が平成20年10月30日に言い渡した判決に対し,上告補助参加人から上告があった。よって,当裁判所は,次のとおり判決する。

主文

原判決中上告人ら敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理由

上告補助参加代理人比嘉廉丈の上告受理申立て理由第2について

1 本件は,大東市の住民である被上告人が,同市が職員の福利厚生のための事を委託している上告補助参加人に対する同市からの補給金の支出が違法であり,上告補助参加人は同市に対して上記支出額に相当する金員を不当利得として返還すべきであるのに,上告人らはその返還請求を違法に怠っているなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,上告人らに対し,上告補助参加人に対して上記不当利得の返還請求をすべきこと等を求めている事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1)上告補助参加人は,大阪府下の市町村及び-部事務組合の常勤の職員等を会員とし,会員の福利増進,生活の向上を期すること等を目的とする社団法人であり,その給付事業として,退職等によって会員資格を喪失した者に対する退会給付金の給付等を行っていた。
上告補助参加人は,事業の経費に充てるため,会員から毎月会費を徴収するほか,会員の所属する市町村等から毎月補給金の払込みを受けていた。

(2)大東市は,大東市職員の厚生制度に関する条例(平成7年大東市条例第12号)に基づき,職員の福利厚生に係る事業の実施を上告補助参加人に委託し,上告補助参加人に対し,平成16年4月分から同20年7月分までの補給金を支出した。

(3)上告補助参加人は,平成17年11月,退会給付金制度を廃止し,上告補助参加人の流動資産のうち100億円を上記制度の廃止に伴う清算金として各市町村等に返遷することとし,同年12月6日,大東市に対し,1億9202万8410円(うち水道事業に係る清算金は862万0169円である。)を返還した。
大東市は,上記のとおり返還を受けた金員(以下「本件清算金」という。)を,雑収入等として平成17年12月15日付けで会計処理した。

(4)上告補助参加人は,上告人らとの間で,平成20年6月20日をもって,本件訴訟において平成17年11月分以前の補給金相当額が不当利得に当たるとされる場合には,本件清算金を同月分の返還債務から過去にさかのぽって順次充当する旨の合意をした(以下,これによる合意を「本件充当合意」という。)。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断し,被上告人の請求を,上告人らがそれぞれ上告補助参加人に対し下記(1)の各金額の不当利得返逮請求するよう求める限度で認容すべきものとした。

(1)平成17年11月分以前の補給金のうち,退会給付金等の給付に充てられた部分(市長部局につき1億0031万0295円,水道事業につき475万8720円)に係る支出は,給与条例主義を潜脱するものとして違法であり,大東市は,上告補助参加人に対し,上記と同額の不当利得返遺請求権(以下「本件請求権」という。)を有する。

(2)本件清算金の返還は,退会給付金制度の廃止により不要となった補給金を不当利得として清算する趣旨でされたものであるところ,大東市は,受領した本件清算金につき,雑収入等として平成17年12月15日付けで会計処理を終了しており,その時点で既に清算金の返還に関する債権債務関係は消滅したものというべきである。そうすると,それから2年6か月以上経過した後にされた本件充当合意がその効力を有するということはできない。

4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是落することができない。その理由は,次のとおりである。
本件充当合意は,前記2(4)のとおりのものであり,上告補助参加人が大東市に対して本件清算金を返還した時点でいったん生じていた,清算金の返還に関する債権債務の消滅という効果 を排除した上で,改めて本件清算金を本件訴附において請求すべきことが求められている不当利得返還債務に充当するというものであると解されるところ,いったん弁済によって生じた法律上の効果 を当事者双方の合意により排除することは妨げられないものというべきであるから(最高裁昭和33年(オ)第581号同35年7月1日第二小法廷判決・民集14巻9号1641貢参照),本件充当合意が清算金の返還に関する債権債務の消滅後にされたことのみを理由として,その効力を否定することはできない。

なお,被上告人は,本件充当合意が実質的には債権の放棄を内容とするものであり議会の議決を要するなどとも主張するが,前記事実関係等の下では,上記主張のようにいうことはできず,その他本件充当合意が公序良俗に反するなど,その効力を否定すべき理由は見当たらない。
したがって,大東市が上告補助参加人に対して有していた本件請求権は,本件充当合意により,そのすべてが消滅したものというべきである。

5 以上によれば,本件充当合意の効力を否定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人ら敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上記部分に関する被上告人の請求を棄却した第1審判決の結論は正当であるから,同部分につき被上告人の控訴を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官宮川光治の補足意見がある。
裁判官宮川光治の補足意見は,次のとおりである。
上告補助参加人が大東市に本件清算金を返還した後,大東市は雑収入等として会計処理を終えていたところ,返遣後約2年6か月を経過した時点で,上告補助参加人と上告人らは,本件訴訟において平成17年11月分以前の補給金相当額が不当利得に当たるとされる場合には,本件清算金を順次さかのぼって充当するという合意をした。本件充当合意は,本件訴訟を終わらせるという意図の下に行われたとみることができる。
しかしながら,当事者の合意により,いったん弁済により消滅した債権を復活させ,当鋲弁済金を他の債権の弁済に充当することは可能である。保証人等の第三者に不利益を及ぼす場合には,その第三者に対しては復活の効力を認めないということが考えられるが,本件は,そのような場合ではない。
本件では,上告補助参加人は,大阪府下の市町村等に対し,退会給付金制度の廃止に伴う清算金として上告補助参加人の流動資産のうち100億円を返還し,会員には残りの流動資産により積立金を返還する等して解散することを予定していたことがうかがわれる。大阪府下の市町村はそれぞれ大東市と同様に補給金相当額の不当利得返還請求権を本来有していたのであるから,多数の市町村に対する返還処理はそのことをも考慮して公平に行われるべきであり,他方で清算事務を早期に終了することも必要である。こうした事情の下では,本件充当合意を相当でないということはできない。

最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官  宮   川   光   治
裁判官     櫻   井   龍   子
裁判官     金   築   誠   志
裁判官     横   田   尤   孝
裁判官     白   木       勇

当 事 者 目 録
大阪府大東市谷川1丁目1番1号
上告人 大東市長  同  本  日  出  土

大阪府大東市灰塚4丁目1番1号
上告人 大東市水道事業管理者職務代理者水道局長 藤  井  敏  和
上記両名訴訟代理人弁護士
俵       正   市
寺   内   則   雄
高   橋       英

大阪市中央区大手前3丁目2番12号 大阪府庁別館内
上記両名補助参加人 社団法人大阪府市町村職員互助会
同代表者代表清算人 中   田   仁   公
同訴訟代理人弁護士 比   嘉   廉   丈
比   嘉   邦   子
渋   谷   乃   宏
渋   谷   麻 衣 子
川   上       確
橋   本   匡   弘

大阪府大東市泉町2丁目7番18号
被上告人      光   城   敏   雄
同訴訟代理人弁護士 井   上   善   雄
豊   島   達   哉
西   浦   克   明

平成21年(行ヒ)第43号
上告受理申立事件番号平成20年(行ノ)第65号
損害賠償請求等(住民訴訟)請求上告提起事件
(原審大阪高等裁判所平成20年(行コ)第26号)
申立人(被告、被控訴人) 大東市長 外1名
相手方(原告、控訴人) 光城敏雄
補助参加人(被告ら補助参加人、被控訴人ら補助参加人)
社団法人 大阪府市町村職員互助会

上告受理申立理由書

最 高 裁 判 所 御中       平成21年1月8日
申立人ら補助参加人訴訟代理人弁護士  比 嘉 廉 丈

第1 上告受理申立人ら補助参加人の訴訟代理人と大東市長及び同市水道事業管理者の訴訟代理人との間においてなされた充当合意が効力を有しないとする判断の誤り(上告受理申立理由第1点)

1 原判決の判断

原判決は、「被控訴人ら及び互助会は,大東市及び大東市水道事業と互助会が原事第5回口頭弁論期日において,平成17年12月15日付けの充当合意と同様の条件及び内容で,清算金(返還金)を不当利得返還債務に充当することについて合意したと主張するが,本件は,控訴人と被控訴人市長及び被控訴人水道管理者との訴訟であり,大東市及び大東市水道事業は訴訟当事者ではないから,原審口頭弁論期日において,被控訴人ら訴訟代理人と互助会訴訟代理人との間でその主張するような内容の合意を行った(弁論の全趣旨により認められる。)としても,その効力を生じるものではない。」(原判決29頁)と判断している。

2 原判決は、地方自治法第242条の2、同第147条、行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第5.5条1項の解釈を誤っている。

(1)地方自治法第242条の2及び同法第147条について

地方自治法第242条の2第1項第4号は、住民訴訟として、「当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に規事鹿償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通 地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求」を認めている。
本件はこの規定に基づいてなされた請求であるところ、大東市長及び同水道事業管理者は、ここでいう「普通 地方公共団体の執行機関」に該当する。
ところで、「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。」(地方自治法第147条)
また、「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及び執行する。」(同法第148条)
さらに、普通地方公共団体の長は「財産を取得し、管理し、及び処分する」事務を担任する(同法第149条第6号)。
ここでいう「財産」とは、公有財産、物品、債権及び基金のすべてを総称する(同法第273条第1項)。
したがって、本件の不当利得返送請求権も、この「債権」に該当するので、市長は、同法第147条、第148条、第149条第6号及び第273条第1項に基づき、この債権を処分する権限、即ち、本件では、合意充当する権限を有する。
また、水道事業管理者は、地方公営企業法(昭和29年法律第292号)第8条に基づき、「地方公営企業の業務を執行し、当核業務の執行に関し、当該地方公共団体を代表する」ので、市長と同じく、債権を処分する権限、即ち、合意充当する権限を有する。
以上のことから、市長らは、原判決でいう「不当利得金の帰属主体」である大東市長らの執行機関であるから、執行機関が関与しておれば、原判決のいう「帰属主体」である大東市らが関与したことになる。

(2)行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第55条第1項について

行政事件訴訟法第7条は「行政事件訴訟に関し、この絵律に定めのない事項については、民事訴訟の例による」としている。
ところで、行政事件訴訟法には、訴訟代理人に弁済充当の合意をする権限があるか否かについての定めがないので、同条を受けた民事訴訟法第55条に規定する訴訟代理人の訴訟代理権の範囲についての定めの解釈によることとなる。
民事訴訟法第55条第1項では、「訴訟代理人は、委任を受けた事件について・・・弁済を受領することができる」と規定されている。
弁済充当の合意は弁済を受領する一方法である。
だとすれば、訴訟代理人は当然に弁済充当の合意をすることができると解される。
なお、訴訟代理人は、相殺の意思表示をする権限をも有する(最判昭和35年12月23日 民集14巻14号3166貢)。
同最高裁判決は、訴訟代理人には、債権の消滅に関する権限があることを認めたものであり、この判旨からすれば、債権の消滅の一方法でもある弁済の合意について訴訟代理人に権限があることをも認める判決であるといえる。

3 本件訴訟代理人らは、それぞれに大東市長ら執行機関の訴訟代理人及び上告受理申立人ら補助参加人の訴訟代理人である。
したがって、本件において、訴訟代理人らが行った弁済充当の合意は、原判決でいう「不当利待金の帰属主体」の執行機関である大東市長らの訴訟代理人と上告受理申立人ら補助参加人の訴訟代理人との間で行った行為であるから、それぞれ弁済充当の合意の権限を有する者の行った行為として、効力を有する。

4 以上のとおり、原判決は、充当合意をした当事者の権限及び訴訟代理人の権限について否定しているが、これは法令の解釈を誤ったものであるとともに前記最高裁判所の判例にも反する。
上記の誤りは、判決の結果に影響を及ぼすことは明らかであり、民事訴訟法第318条第1項所定の「法令の解釈に関する重要な事項」に該当するとともに、同項所定の「最高裁判所の判例違反」に該当する。

第2 給付後の弁済充当の合意は効力を有しないとする判断の誤り
(上告受理申立理由第2点)

1 原判決の判断

原判決は、「被控訴人ら及び互助会は,大東市及び大東市水道事業と互助会が平成20年6月20日をもって,平成17年12月15日付けの充当合意と同様の条件及び内容で,清算金(返還金)を不当利得返還債務に充当することについて合意したと主張し,これを裏付ける証拠(丙17,18の各1・2)を提出する。しかしながら,大東市及び大東市水道事業に対する上記清算金の返達は,前記(1)認定のとおり,互助会が受額した補給金の使途として退会給付金の給付が大きな役割を占めていたところ,退会給付制度が廃止され,既に受領した補給金の使い道がなくなり,これを保有する理由がなくなったためになされたものであって,本件請求に係る既に実施された退会給付金等に関する清算のためになされたものと見ることはできない。また,大東市及び大東市水道事業は,互助会から上記清算金を受領し,その金員を雑収入等として,平成17年12月15日付で会計処理を終了しており,その時点で既に上記精算金の返還に関する債権債務関係は消滅
しているものというべきである。そして,それから2年6か月以上経過した後に行われた上記弁済充当合意については,その効力を有するものと認めることはできない。」(原判決30貢)と判断している。

2 原判決の判断は、最高裁判所昭和35年7月1日第2小法廷判決(民集14巻9号1641貢)の判例に反する。

(1)同最高裁判決は、
「被上告人Xは上告人Yに対し、賃料2箇月分以上延滞したときは、催告を要せず解除できる特約付きで土地及び家屋を賃貸し、Yは右土地上に家屋を建設所有していたが、約3年間の賃料の支払いをしなかったので、Xから催告を受け、一旦Xの要求どおり3万円余円を小切手及び現金で支払った。
しかし、Yはこれに不満があって間もなくその返還を求め、Xもやむなくこれに応じて前記小切手及び現金をYに返還した。そこでXからYに対し、前記特約に基づき解除の意思表示をしたうえ、Y建設の家屋を収去し賃貸土地家屋を明渡すべきこと等を求めるため本訴を提起したという」事案について、
「仮に、所論小切手が現金の支払に代えて交付されたものであっても、当事者の合意により右小切手及びこれと共に支払われた一部現金を返還した以上、所論債務は未だ履行のない状態に立ちかえったものと解するのが相当である。何故ならば、弁済が事実行為であっても、これによって生じた法律上の効果 を当事者双方の合意により排除することは何ら妨げなく、しかも、弁済の目的物を合意の上弁済者に返還することは、特別 の事情がないかぎり、弁済の効果を排除する合意を伴うものと推認し得るからである。
されば、前記小切手及び現金の返還により所論債務は未だ履行なき状態に立ちかえったものと解し、所論契約解除の効力を認めた原審の判断は正当であって、論旨は理由がない。」と判旨している。

(2)以上のとおり、同最高裁判決は、「弁済が事実行為であっても、これによつて生じた法律上の効果 を当事者双方の合意により排除することは何ら妨げな」いとしており、いったん消滅した債権であっても、当事者間の契約で消滅した債権を履行のない状態に戻すことができると判旨している。

(3)なお、同最高裁判決については、「判例は、一貫して『債権者卜債務者トノ間二存在シタル債務関係一旦弁済二因リテ消滅シタル場合二於テハ仮令当事者力異時旧債務関係ヲ復括スヘキ意思表示ヲ為ストモ,其意思表示ハ新ナル債務関係ヲ生スへキ効力アルニ止マリ之力為ニ一且消滅シタル債務関係復籍スヘキ理万アルヘカラス』との見地をとってきたが、最高裁判所は、『弁済の事実行為があっても、これによって生じた法律上の効果 を当事者双方の合意により排除することは何ら妨げなく、しかも弁財の目的物を合意の上弁財者に返還することは、特別 の事情がないかぎり、弁財の効果を排除する合意を伴うものと推認し得る』と判事するにいたった。」(林良平ほか『債権総論(現代法律学全集8)』青林書院)と評価されている。

3 本件と前記最高裁判決との関連

本件では、平成20年6月20日付けで「大東市及び大東市水道事業と互助会は、平成17年11月分以前の互助会に対する補給金につき不当利得返還債務が生じる場合には,互助会が同年12月15日付で返還した金員を,同年11月分以前の補給金から過去に遡って生じる不当利得返還債務に順次充当する」旨を合意している。
この合意は、当該合意以前の「弁済の効果を排除する合意」を伴うものである。
したがって、仮に、大東市及び大東市水道事業が、平成17年12月15日付けで互助会から返還を受けた金員が「退会給金融度廃止に伴う清算金」として返還されたものであり、またこの金員を収入済みとして会計処理した結果 、「退会給金制度廃止に伴う清算金」の返還に関する債権債務関係が消滅していたとしても、前市長高裁判決に従えば、上記合意によって、「退会給金制度廃止に伴う清算金」の返還に関する債権債務関係の消滅という効果 が覆されることとなる。
すなわち、「大東市及び大東市水道事業と互助会は,平成17年11月分以前の互助会に対する補給金につき不当利得返還債務が生じる場合には,互助会が同年12月15日付けで返還した金員を,同年11月分以前の補給金から過去に遡って生じる不当利得返還債務に順次充当する」旨の合意は、前記最高裁判決のいう「弁済が事実行為であっても、これによって生じた法律上の効果 を当事者の合意により排除する」ものである。
したがって、清算金返還債務は平成17年12月15日に遡って消滅しなかったこととなる。
他方で、上告受理申立人ら補助参加人互助会が大東市及び大東市水道事業に返遷した金員の限度で、「平成17年11月分以前の補給金から過去に遡って生じる不当利得返還債務」が、平成17年12月15日に遡って消滅していたこととなる。
しかるに、原判決は、前記最高裁判決を看過し、「債権債務関係が消滅している以上、その後の弁済充当合意時効力を持たない」と述べており、この点で原判決の判断は、前記最高裁判例に反する。

4 以上述べたとおり、原判決は給付彼の充当合意の効力を否定しているが、この判断は法令の解釈を誤るとともに、最高裁判所の判例に違反しており、民事訴訟法第318条第1項所定の事由に該当する。

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