[却下]大東市外部団体の銀行通帳 公文書非公開決定取消請求 – 平成22年 [地裁] (行ウ) 第25号

大東市外部団体の銀行通帳
公文書非公開決定取消請求

平成22年 [地裁] (行ウ) 第25号

提訴    2010年2月8日
答弁    2010年3月19日(被告側)
準備(1) 2010年5月14日
準備(1) 2010年9月22日(被告側)
準備(2) 2010年9月22日(9/15に作成)
判決    2010年12月8日 却下

この色は原告側からの訴状、準備書面など
この色は被告側からの答弁書、準備書面など
この色は裁判所からの判決など

 
提訴 2010年2月8日

訴状

〒574-0024
大阪府大東市泉町二丁目7番18号 原告        光城 敏雄
(送達場所)電話 072(875)4829
携帯電話 090(9990)6527
ファクス 020(4623)1016
〒574-8555
大阪府大東市谷川一丁目1番1号  被告  大東市
同代表者兼処分行政庁  大東市長 岡本 日出士

事件名    公文書非公開決定取消請求事件
請求の趣旨

1、処分行政庁が平成21年8月18日付けで原告に対してした公文書非公開決定(大東総第299号)を取り消す。
2、訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

請求の原因

1、当事者
原告は肩書地に居住する大東市民である。
被告は大東市の市長であり、同市の「大東市情報公開条例」(以下本件条例という)の実施機関である。

2、文書公開請求
原告は、平成21年7月30日に、「各部署が保有、管理している外部団体の銀行通帳(個人と課など親睦会を除く)の団体名、名義人その通帳の末ページ4ページの写し。また、通帳を開設している目的と保有、管理している文書など。」の情報公開請求をした。

3、本件処分
被告は平成21年8月18日に非公開決定を行なった。

4、非公開理由
被告は、本件処分を行なった理由として、「文書不存在による。(請求する情報の件名にある「外部団体の銀行通 帳」は、大東市情報公開条例(平成9年条例第3号)に規程する情報に該当しないため。)」としている。

5、非公開決定取消請求の理由
しかし、本件で原告が情報公開請求した情報は、非公開理由にまったく該当せず、むしろ積極的に市民に公開すべき情報である。
また本件非公開処分は、本件条例の定義であるところの、「この条例は、開かれた市政の実現のため、市の保有する情報を公開することにより、市民の知る権利の保障と市政への参加を推進するとともに、市の市民に対する説明責任を果 たすことにより、市民と市との信頼関係を深め、市民主体の市政を実現するものとする。」(本件条例第1条)に反するものである。

6、よって本件処分は違法であるから、その取消を求め本訴に及ぶ。

証拠書類

1、甲1号証   非公開決定通知書

添付書類

1、甲号証写し  各2通

平成22年 2月 8日
原告  光城敏雄
大阪地方裁判所御中

 
答弁 2010年3月19日

平成22年(行ウ)第25号
公文書非公開決定取消付求事件
原 告 光  城  敏  雄
被 告 大  東  市

答  弁  書

平成22年3月19日
大阪地方裁判所 第2民事部丙係 御中

〒533-0033 大阪市東淀川区未申島1丁日2I番33号
俵ビル2階 俵 法律事務所(送達場所)
電話 06(6323)6700
FAX 06(8323)5510
上記被告訴松代理人
弁護士 寺 内 則 雄
同  俵   正 市
同  小 國 隆 輔

第1 請求の趣旨に対する答弁

1 原告の賄求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。

第2 請求の原因に対する認否

「1」~「3」について。
概ね認める。但し,被告は大東市であり, 実施機関は大東市長である。
「4」~「5」について。
争う。特に本件非公開処分が本件条例第1条に反する点は否認する。

第3 被告の主張

1 原告の請求に係る「外部団体の銀行通帳」(以下,本件文書という)は,いずれも同団体の所有に属するものであるところ,同団体は,年間の事業計画,予算及び決算については総会で決定し,運営されているため,大東市とは別 の団体であり,同団体に関する文書は公文書に族当しない。つまり,これらの団体は概ね総会を意息決定機関とし,その運営については内部規約等に従って処理することとされており,その経理関係書務についても,大東市の会計規則や事務決裁規程のもとに処理されていない。
2 したがって,本件文書は,大東市情報公開条例第2条の「実施機関が職務上作成または取得した文書,図画,写 真,フイルム,磁気テープその他これに類するものに入力された記録で,実施機関が管理している」「情報」に骸当しないことは明らかである。
3 よって,原告の本件請求が失当であること明らかであるので速やかに棄却するよう求めるものである。

以 上

 
準備(1) 2010年 5月 14日

平成22年(行ウ)第25号
公文書非公開決定取消請求事件
原告    光城 敏雄
被告    大東市

準備書面 (1)

大阪地方裁判所 第2民事部 丙係 御中

平成22年 5月 14日

〒574-0024
大阪府大東市泉町二丁目7番18号
原告  光城 敏雄
(送達場所)電話 090(9990)6527
ファクス 020(4623)1016

その一、

裁判長の助言により行政担当者と再び話し合いを重ねている段階で、本日時点では請求、請求に近い情報はまだもらっていません。
すでに本件請求と同様の内容は守口市では情報公開されています。原告は4月上旬にA4判用紙にして244枚もの守口市の書類を行政担当者に貸し出し、「このように他市では公開されているので、同じように公開してほしい」旨を伝えています。
その際の趣旨として例えば、「ここにある大阪府公平委員会連合会なる組織の通 帳は公金で成り立っているだから、公開すべし。しかし、その下の電話料金についての通 帳は(公開し)なくてもいいかな。でも(通帳が)あって、公開するのならそれでも構いません。」(甲2号証)などについて協議を重ねた。目下、行政側は検討している模様です。

その二、

そもそも本件請求時点、行政担当者はどのような理解、把握だったのかを原告はそれを知るために、「情報公開請求受付してから、総務課が各部署に照会を行った文書と各部署、担当課から総務課に報告がされた文書」との内容の情報公開請求を5月10日に提出している(甲3号証)ところです。

以上

 
準備(1) 2010年 9月 22日

平成22年(行ウ)第25号
公文書非公開決定取消請求事件
原 告 光  城  敏  雄
被 告 大  東  市

準備書面(1)

大阪地方裁判所 第2民事部 丙係 御中

平成22年9月22日
被告訴訟代理人  弁護士 寺  内  則  雄

頭書事件について,被告は,以下のとおり弁輸を準備する。

第1 原告からの本件文書公開請求と公開に至る経緯について

1 平成22年3月19日の本件第1回口頭弁論期日において,次のやり取りがあった。 (1) 原告の請求にかかる「外部団体の銀行通帳」について、被告は答弁書においてその主張を明らかにするとともに,「外部団体」の意味が 判然としないことを指摘したところ,原告より「市の所轄事務に関連して負担金を出している団体の事務局を北河内で当番制にしているが,そのような団体の通 帳を公開して欲しい」「守口市でも公開されている」との回答があった。
(2) この原告の回答を受け,裁判所から「市が負担金を支出している団体とある程度特定するような形で,再度市の情報公開の担当者と話をされてはいかがですか」とのアドバイスがあった。

2 第1回口頭弁論期日後のやり取りについて
(1)平成22年3月未,総務課窓口において,原告と話し合ったが,担当者よりどのような団体の通 帳のコピーなのか常闇をするも,具体的に明確にならず,原告は再度来庁する旨告げて帰られた。その後,平成22年4月2日にも来庁されるも,話し合いに進展はなかったが,総務課で原告とのやり取りで要求していると思われる文書をまとめることになった。
(2)平成22年5月10日,原告と大東市役所内で接触し,総務課でまとめた案を示すが,「それでは100%ではない」旨告げられたので,時間をかけていくつかの具体例をあげながら,公開して欲しい対象の絞り込みを行ったところ,原告から当初の情報公開請求に関して,総務課が市の各所管課こ照会を行った内容と,各所管課から報告を受けた結果 について,新たに情報公開請求がされた。総務課では,上記照会により,各所管課から報告を受けた銀行通 帳(乙1別紙一覧表参照)が原告がおおよそ公開して欲しい対象の文書であるということが判ってきたので,公開すべく準備を進めたいと考えたが,情報公開することにより,団体の財産権その他,団体の正当な利益を侵害することが予想されるため,所管課に確認を取る必要があると考え(このことは,新たに請求された情報公開に対しても該当する),その確認に1カ月程度の日数を要するものと見込まれたので,日数をいただきたい旨原告に伝え了承を得た。
(3)つまり,原告が公開して欲しいとする文書が,当初原告が主張していた外郭団体だけでなく,各所管課にある銀行通 帳全般であることが判ってきたため,市の方で検討することになったということである。
(4)その後総務課は原告との話しを受けて関係部署に照会を行い,原告が請求していると思料される文書を整理した。これについて,原告に対し,本件訴訟にかかる情報と新たに提出のあった情報公開請求で求められている情報がほぼ同-のため,この文書の提供により,それぞれの情報に対して公開したものとして取り扱うよう説明を行ったところ,同人は,これを了解したので,後日,メール送信する旨伝え,同年6月7日これを送付した。
3 本件文書の公開後の状況について
(1)被告は,本件文書の送付により,本件訴訟は取り下げされるものと考えていたところ,原告より,公開しない理由として「文書不存在」との通 知事(甲1)は納得できない,謝罪を求めるとの発言があり,被告はそれはできないとし,決着を見ないまま7月2日の第2回口頭弁論期日が開かれた。
(2)以上の経過から,被告は原告から本件訴えの取り下げが期待できない状況になったため,平成22年7月29日付をもって,甲1の非公開決定を撤回する旨の通 知書(乙1)を原告に送付した。

第2 本件訴えの利益について

前記の経緯からも明らかなように,原告の請求にかかる文書は全て開示されているので,本件請求は訴えの利益を欠く不適法となったので,被告は速やかに訴えの取り下げをされるよう要望するとともに,万一,取り下げなき場合,訴えを却下されるよう求める。

以 上

 
準備(2) 2010年 9月 22日

平成22年(行ウ)第25号
公文書非公開決定取消請求事件
原告    光城 敏雄
被告    大東市

準備書面 (2)

平成22年 9月 15日

大阪地方裁判所 第2民事部 丙係 御中

原告    光城 敏雄

その一、  はじめに

訴訟を起こし裁判に訴える限りは、両者とも法的根拠に基づき、時間的因果 関係、論理的思考が要求されるのであって、決して権威が先走ったり、職業的地位 が優先されるものでもありません。
地方自治体は組織的にもまた一職員としても、法律はもとより条例など法体系に忠実でなければならないとはいえ、一人の人間、または組織的であったとしても、その場の雰囲気など個人個人の行政学的認識の力量 を超え、また瞬時においての判断で法的裁量権の見解の誤認、そのときの記憶違いや、いつもの癖で相手の論理性を無視して、自己の考えのみが正しいと思い違いをしてしまうこともあり得るとも思っています。
但し当然のことながら、長時間の熟慮、組織的会議を経て、冷静に理屈の上で自己並びに行政組織としての間違いに気付いたときには素直に謝罪し、筋道の通 った考え方を相手方と世の中に示さないといけない。
被告側の準備書面(1)だけを読むと、確かに一通りの流れが書かれていて、一見、辻褄が合っているように思えますが、事実ではありません。必要以上に誇張した表現やこと細かに小さな事実誤認を指摘して争うこともできますが、それではいつまで経っても本論に入れないし、記録に残らず記憶だけの情報だけでは説得力もないし、明確な証拠も残っていない事柄もあり、所謂、水掛論争になり兼ねないので、ここでは事実に基づいて議論の構築に努めることとします。
弁護士が書いた書面は、いついつと日付も書いてあり、事実が並んでいるかのように見られ、情報公開請求者(原告)がまともに窓口に伝えることができず、請求しきれなかったところを総務課が努力の結果 、やっと請求者の言い分を聞き取って、情報公開の実施に漕ぎ着けたと読み取れる。
が、随所に事実誤認というよりはむしろ強引な意図的歪曲が見られ結果的に、虚言となっている。

その二、事実よる論理的な過去の再構築

今から述べる事では重複する部分もありますが、被告側の準備書面(1)の稚拙な論理的矛盾を原告が突き明らかに指摘するためには仕方のないことです。
それでは被告側の準備書面(1)と平成22年7月29日付け通知書である大東総第342号(乙1号証)について、いかに重要な矛盾点を持ったものであるかを日付順に検証してみましょう。
被告の言い分では、原告の情報公開請求の趣旨の理解を「聴き取りを行った結果 」など、再三再四に渡っての原告と情報公開の窓口である総務課との問答が被告側の準備書面 (1)からも読み取れ、そしてその日時は、平成22年3月19日、第一回目の口頭弁論の日以後とされています。
しかし実際には、被告はその前年の平成21年7月31日付け大東総第305号において、「情報公開請求に係る書類の提出について(依頼)」(甲4号証)として問い合わせを総務部長から各部等の長 様に命令している。それに対して、各部等は数日後に、課・グループ・局・公社の20の機関が、39の通 帳を報告している。すべて印刷をするとA4サイズ254枚分の書類を総務部長宛に返答している。そのA4サイズ254枚分を証拠としていつでも裁判所に提出できますが、被告がここまでの事実を否認するのでしょうか。
七か月以上も前に総務課も各部組織も原告の情報公開請求書の趣旨を読んですぐ理解して、39の通 帳の存在が明らかになっているのに、被告側の準備書面(1)では、第一回目の口頭弁論の日以後に何度にも渡って請求者(原告)の意図が、わからないかのように振舞うのはなぜでしょうか。
総務課が役所内部では公開されているのに、窓口ではとして「意味不明者」としての情報公開請求者(原告)と接しているのは、なぜだろうか。世の中では普通 こういった人間の態度を二枚舌といいますね。
そして最大の問題点は、被告は平成21年8月18日時点で、「文書不存在」という非公開決定を原告に通 知しましたが、その時点では総務課のどこかの棚か書架に、39の通帳の写 しが明らかに「存在」しているから、「文書不存在」などでは決してなかったことですね。
その時点での非公開決定を取り消していただきますようお願いいたします。
但し付け加えて、平成22年7月29日付け通知書、大東総第342号(乙1号証)では大東市事業所人権推進連絡会の通 帳は公開されたことになっていますが、事実に反します。原告には公開されていません。
因みに原告は「各部署が保有、管理している外部団体の銀行通帳写し等」(甲5号証)として、A4サイズ254枚分の書類を目次としてまとめてあります。
このように不充分ではあるが、通帳の存在と通帳の写しを少なくとも平成21年8月11日までには総務課に報告しているので、平成22年7月29日付け通 知書、大東総第342号(乙1号証)「その後、請求の内容について聴き取りを行った結果 」とあるが決してそのようなことではありません。
本件はあくまでも非公開決定の取り消しを求めるものであって、中途半端な公開だけを持ってしかも、倫理性かつ時間的論理性もないのに「訴えの利益を欠く」ことにはなりません。
まただから、被告側の準備書面(1)のまとめのように書かれてある平成22年7月29日付け通 知書、大東総第342号(乙1号証)の内容は嘘であり、撤回しなければならない義務が行政側に生じています。

その三、 付随する二つの違法な問題点

① 個人情報保護条例に違反
平成21年7月31日付け大東総第305号 「情報公開請求に係る書類の提出について(依頼)」(甲4号証)では、情報公開請求者としての原告の住所と氏名を記載しているので、大東市個人情報保護条例のいうところの実施機関の責務を規定している第3条「実施機関は、この条例の目的を達成するため、この条例の趣旨を遵守し、個人情報の保護について必要な措置を講じなければならない。」に違反しています。情報公開請求者への連絡のために総務部総務課だけが知っていれば充分な個人情報を庁内すべての部署に周知させる必要などまったくありません。すべての請求者の個人情報は保護されていなければならないはずなのに、個人情報の漏洩の一例となってしまっています。この違法行為は別 件でも総務課窓口では通例のことなのか聞いてみたい。

② 服務命令に違反
さて、総務部長からの「情報公開請求に係る書類の提出について(依頼)」に対して以下のように報告書が未提出の部課、組織があります。
○ 政策推進部の企画経営課、秘書広報課、危機管理課。
○ 市民生活部の人権課の野崎人権文化センター、菊水温泉。
○ 街づくり部の都市整備課、交通対策課、建築営繕課、下水道管理課、下水道整備課。
○ 生涯学習部のスポーツ振興課。
○ 水道局の施設課。
○ 消防本部の予防課、警防課、予防課、消防課。
○ 農業委員会事務局。
○ 固定資産評価審査委員会。
以上18の課または組織は、保有、管理している通帳がなくともそのことを総務部に報告しなければならない義務があるのに、平成21年7月31日付け大東総第305号において、各部等の長様宛に総務部長から「情報公開請求に係る書類の提出について(依頼)」問い合わせ(甲4号証)の総務部長の命にも応ぜず服務命令違反、本件条例違反の機関である。
また、総務部長は命に応じていない機関、組織、またその責任者に対して、なんの処分も行っていない。
本件で公開されていない文書についてはそれぞれ各課から返答がなかったのか、もしくは返答はあったけれども総務課が違法にも公開すべきでない判断しているのか明らかにすべきである。

その四、最後に

そもそも本件条例は市民との信頼関係を築くための条例であるはずです。条例の目的として、こう謳われています。
第1条 「この条例は、開かれた市政の実現のため、市の保有する情報を公開することにより、市民の知る権利の保障と市政への参加を推進するとともに、市の市民に対する説明責任を果 たすことにより、市民と市との信頼関係を深め、もって市民主体の市政を実現するものとする。」
被告側の準備書面(1)のように事実を捻じ曲げるということは、本件条例で謳われている「市民と市との信頼関係を深め、もって市民主体の市政を実現する」を真っ向から否定し、破壊する行為であることを改めて記しておきます。

以上

 
判決 2010年 12月 8日 却下

平成22年12月8日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成22年(行ウ)第25号 公文書非公開決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成22年9月22日

判    決

  大阪府大東市泉町2丁目7番18号
原         告  光城敏雄
大阪府大東市谷州1丁目1番1号
被         告  大東市
同代表者兼処分行政庁   大東市長 岡本日出士
同訴訟代理人弁護士    寺内則雄
同            俵 正市
同            小國隆輔

主    文

1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

大東市長が平成21年8月18日付けで原告に対してした公文書非公開決定(大東総第299号)を取り消す。

第2 事案の概要

1 事案の骨子
本件は,原告が,大東市長に対し,大東市情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき情報公開請求をしたところ,非公開決定(平成21年8月18日付け大東総第299号,以下「本件処分」という。)がされたため,本件処分の取消しを求めた事案である。

2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実)
(1)原告は,平成21年7月28日付けで大東市長に対し,本件条例に基づき,情報の件名を「各部署が保有,管理している外部団体の銀行通 帳(個人と課など親睦会を除く)の団体名,名義人その通帳の末ページ4ページの写 し。
また通帳を開設している目的と保有,管理している理由がわかる文書など。」
として,情報の公開を請求し(以下「本件公開請求」という。),当該請求書は,同月30日付けで受け付けられた(甲1,弁論の全趣旨)。
(2)大東市長は,平成21年8月18日付けで,本件公開請求に対する非公開決定をし(本件処分),本件条例10粂3項に基づき,これを原告に通 知した(甲1)。
当該通知書には,公開しない理由として,「文書不存在による。(請求する情報の件名にある「外部団体の銀行通 帳」は,本件条例(平成9年条例第3号)に規定する情報に該当しないため。)」と記載されていた(甲1)。
(3)原告は,平成22年2月8日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
(4)原告と被告は,平成22年3月19日に行われた本件訴訟の第1回口頭弁論期日後に期日外で協議を行い,本件公開請求の対象とされた情報につき,別 紙銀行通帳一覧表記載の各通帳(以下「本件対象情報」という。)であると特定し,大東市長は,同年6月7日,本件対象情報のうち,大東市事業所人権推進連絡会に関する通 帳を除く情報を原告に公開するとともに,本件処分を撤回する旨の決定をし,同年7月29日付け通 知書(大東総第342号)を原告に送付してこれを通知した(乙1,弁論の全趣旨)。

3 当事者の主張

(1)原告の主張
大東市長は,原告の本件公開請求に対し,その対象となる文書(情報)が不存在であるとの理由でこれを非開示とする本件処分を行っているが,実際には,本件処分当時,被告の総務部長は,各部の長に対し,本件公開請求に係る書類の提出を依頼した上で,本件対象情報の存在についての報告を受けていたのであり,文書(情報)が存在していることを認識していたのであるから,本件処分は違法であり,取り消されるべきである。

(2)被告の主張
本件公開請求の対象である「外部団体の銀行通帳」は,当該団体が所有するもので,実施機関が職務上作成又は取得した文書等に入力された記録で,実施機関が管理している情報に該当しないことから,大東市長は本件処分をしたが,本訴提起後原告とのやり取りで,本件公開請求の対象が本件対象情報であることが判明し,大束市長は,本件対象情報について,存在するものについてはすべて公開しているのであるから,原告の訴えは,訴えの利益を欠き,不適法であるから却下されるべきである。なお,大東市事業所人権推進連絡会に関する通 帳については,不存在であるから公開していない。

第3 当裁判所の判断

1 訴えの利益について

(1)処分の取消しを求める訴えにおいて,当該処分が事後的に撤回され,当該処分の効果 が失われた場合には,取消しを求める対象が消滅することになるため,なお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益がある場合を除き,訴えの利益は消滅する(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項参照)。

(2)そうであるところ,前記前提となる事実によれば,大東市長は,本件処分をすべて撤回し,これを平成22年7月29日付けで原告に通 知したというのであって,撤回により本件処分は消滅したと認められる。
そして,本件処分が撤回により消滅した場合に,なお原告が本件処分を取り消すことによって回復すべき利益があるとは認められないから,原告は本件処分の取消しを求めるべき法律上の利益を有しないというべきである。

(3)したがって,本件訴えは不適法であるから却下すべきである。

2 訴訟費用の負担について

(1)前記前提となる事実に加え,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成21年7月28日付けで行った本件公開請求において,公開を求める対象を「各部署が保有,管理している外部団体の銀行通 帳(個人と課など親睦会を除く)の団体名,名義人その通帳の末ページ4ページの写 し。また通帳を開設している目的と保有,管理している理由がわかる文書など。」と記載していたところ(甲1),被告の総務部長は,本件公開請求を受け,被告各部等の長に対し,各課等が保有,管理している銀行通 帳(職員個人所有通帳及び課等の親睦会による所有通帳は除く。)について,口座名義人が分かるページの写 し,通帳の使用末4ページの写し,通帳を開設している目的,各課等において通 帳を保有,保管している理由等を書面で提出するよう依頼し(甲4),本件軋象情報の存在につき報告を受けたものの(甲5,弁論の全趣旨),大東市長は,これらが本件公開請求の対象となるものではないとの判断をして,これを非公開とする本件処分をしたこと,その後,原告が本件訴訟を提起し,本件訴訟の第1回口頭弁論期日において,当裁判所から原告に対し,本件公開請求の対象の記載のうち「外部団体」の意義が不明確であることから,これを特定するよう求釈明をしたことを受け(顕著な事実),被告の担当者と原告との間で請求の対象についての協議が行われ,その結果 ,本件公開請求の対象が本件対象情報であることが特定され,これを前提に,大東市長が大東市事業所人権推進連絡会に関する通 帳を除く本件対象情報を公開するとともに,本件処分については撤回するに至ったこと(乙1)が認められる。

(2)以上のような経緯を踏まえれば,本件訴えが不適法であり却下されるべきものであるとしても,原告に訴訟費用を全額負担させるのは相当ではなく,原告が本件公開請求の対象として記載した「外部団体」の意義が不明確であったことが,原告と大東市長との間で,その対象の理解に齟齬が生じた原因である一方,大東市長において原告と調整することにより本件公開請求の対象が本件対象情報であることを認識し得たというべきであり,当事者の衡平の観点から,訴訟費用は双方がこれを2分の1ずつ負担するのが相当である。

3 結論

よって,本件訴えを却下し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民事訴訟法61条,62条を適用することとして,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 山  田     明
裁判官    徳  地     淳
裁判官    藤  根  桃  世

別 紙
銀行通帳一覧表 通帳名
大東市統計調査連絡協議会
大東市保険組合
府互助会事務担当者
厚生事務取扱者
大東市役所職員財形口
生命保険事務取扱者
斡旋関係事務取扱者
大東市派遣関係
大東市民憲章推進協議会
大東市防犯委員会
交通事故をなくす運動推進本部
日本赤十字社大東市地区
日本赤十字社大束市地区(市長名)
大東市傷痍軍人会
大東市区長会
大束市民祭り実行委見会
大東市子ども未来部
野崎駅周辺総合計画推進協議会
緑の募金
大東市学校支援地域本部事業案行委員会
大東市学校保健会
大東市学校給食会
大東市学校給食会(事務局長)
大東市幼稚園教育振興連絡協議会
大東市教育委員会振興センター
北河内地区PTA協議会
北河内地区青少年指導関係者連絡協議会周年行事
北河内地区青少年指垂関係者連絡協議会
大東地区人権擁護委員会
大東市人権教育啓発推進協議会
大東市事業所人権推進連絡会
大東市火災共済見舞金
大東市選挙管理委員会事務局
大束市監査委員事務局
大東市公平委員会
大東市議会 議員厚生会
大束市議会健康管理事業
議会事務局
大阪府市議会事務局長会
大東市土地開発公社

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